あのころ、お宮でためたお金がかなりあった。そしてそっくりそのまま風俗に使うこととなる。
元神職としては情けない話だが、逆に健康的ではあるだろう。
おれが風俗にのめりこんだのも、あながちおれの不信心さばかりではない。
生まれついての女運のなさに嫌気もさしたし、いつまでもこんな事が続いたんではお先真っ暗だと思った。また、三十霊会という天敵もいる。彼らのようなホモ集団に抵抗したのかもしれない。いわゆる彼女がいないのが一番いやだった。とにかく現状を打破したかったのだ。
当時、女子大生が一斉を風靡していた。女子大生文化の花盛りだった。ちょうど芸能人の松本伊予が女子大生で、トップリーダー・ファッションリーダー的な存在だった。
それとともに風俗業界が急速に膨張し始め、それらは女子大生を売りに事業展開していたのだった。
そんな折、おれの潤沢な資金と風俗が合体したというわけだ。咲夜姫の存在もあったわけだが、当時のおれは咲夜姫は遠い存在だと思っていて、恋愛対象だとしても霊界は霊界、人間界は人間界と、まったく別に考えていた。異界に女がいて、この世はこの世で女がいる――それが正常ではないか?
さて、おれの本拠地は習志野だが、最寄の駅までバスで出なければならない。総武線の津田沼駅である。そこから東京を目指すのだ。このあたりは通勤圏内なのでわりと近い。
新宿・渋谷進出はまだ時期尚早ということで、まずは池袋から攻めることにした。
あのころは「夜の池袋」とかいう歌もあったし、僕としては親しみやすかった。さほど気取った街ではないので馴染みやすく、新宿渋谷に拠点を移したのは、かなりたってのことだった。
自衛官というのは昔からファッションセンスがおかしいとよく言われる。軍人(自衛官)にファッションとかオシャレなどといわれても無理な話である。
どこに行っていいのかわからないので、情報雑誌で調べて行ってみることにした。
〈この子は絶対かわいいなあ。どうせお金払うならこんな子がいいな〉と思った。
行っては見たものの店が変わっていたり、あちこち探し回ったが、なかなか良い店があったのでそこにした。風俗はいつの時代も、取締りがあるので移り変わりが激しいのだ。
そこでであったのは舞子という女だった。美人とまでは言えないまでも、華奢で可愛くおれにとっては高得点で、籠からあふれ出るくらいだった。
「いらっしゃい。」笑顔で挨拶をして出迎えてくれたが、どことなくよそよそしい。作り笑顔のような気がした。警察にも間違われるのもなんとなく癪なので、ことさら自分が自衛官であることを強調した。
「え~~~うっそだ~~~」
「本当だよ。ほらこれ。」仕方なくおれは身分証明書を見せることにした。
「え~~~っとこれが~~~」と、証拠になる国家警察隊と言う文字を探したが、なかなか見つからず、仕方ないので国防大臣の大きな朱印を指し示した。
「ほら国防大臣の朱印があるだろう。」
女はまじまじと、しかもしつこく見つめている。
「わかりました~~~。一万円頂きま~~す。」急にニッコリ笑って、さっきの愛想笑いのような変な顔とはうって変わった笑顔を向けてきた。嬉しそうでもあった。
こういう場所ではどうどうと料金表に書くことは出来ない。
風俗の女とはいえ最近の女の子はさばさばしている。あまり性に関してこだわってはいないようだ。
おれもこだわらない。ふつうの女の子と付き合うことはなく、風俗の女たちと関わることが多かったからだ。
彼女とはうまくやっていけそうだった。あまり緊張しないで話せるし、気を使わない。相性のいい証拠だ。この仕事は折を見てやめさせればいい、そう思った。
ふつうならここから付き合いが始まるだろう。風俗の女とはいえ、同じ人間である。また、この子達はちょっとしたお小遣い稼ぎ、仕事が決まるまでのつなぎでやっていたりする、ふつうのバイトなのだ。それに――おれからすればこの店があったればこそ、この子に会えたのだ。
ところがである。
次の週を楽しみにして訓練に励み、行ってみると彼女はいなかった。その子の友達に聞いたら風邪で休んでいるという。強引に見舞いに行こうかと思ったが、次にしようと思った。次の週に行ってみるともうその店はなかった。警察の取り締まりにあったらしい。
風邪を引いていたときに彼女に会いに行ってたとしても、けっきょくうまくいかなかっただろう。この時から感づき始めた。咲夜姫が邪魔しているらしいと。
ほかにもけっこうこんな場面がたくさんあった。しかし、どこかで何かの歯車が狂うのだ。いや、狂わされるのだ。
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