2010年4月25日日曜日

ピンク色の少女

  
   ピンク色の少女……咲夜姫?

これは糧食班でのことだったと思う。
糧食班は駐屯地の全隊員の食事や、演習にも同行して演習中の食事の配給も行う。
他の隊員たちの時間帯とはまったくちがい、朝早くおきて朝・昼・夕の食事に間に合うように準備をする。だから食事の準備さえしてしまえば、自由時間を多く取ることが可能で糧食班の魅力でもあった。

 そのときおれは演習に随伴する糧食班で、富士に来ていた。みながきつい訓練をしているとき、あったかい(時には熱い)ところで飯炊きをしていたのだ。糧食班、糧食班と馬鹿にされたりもするが、知ったこっちゃない。

 その日はみんなの携行食を準備して午後は暇となり、隊舎の割り当てられたベッドで寝ていた。
 すると、夢なのか霊界に入っているのかわからないが、ふと相向かいのベッドを見ると、二段ベッドのうえに美しい少女がちょこんと座っていた。
 しかも素っ裸だった。アニメを現実にしたような、今風に言えばCGのキャラクターのようだった。肌もツヤツヤで全身うつくしいピンク色だった。
 おれはなんとなく咲夜姫だと感じていた。
 しかし、彼女はいかにも憂鬱そうな寂しそうな顔をして、細い両足を所在なしにぶらつかせていた。目はうつろに中空の一点を見つめ、悩んでもいるようだった。
 彼女がほんとうにおれのことを好きで好きで仕方ないような気がした。
 彼女とはいえ神様なのだし、まさかおれみたいなどこの馬の骨ともわからない人間を好きになるなんて――それほどおれも自信過剰でもないし――しかし、彼女の沈んだ面持ちはどうにも気になった。

 ――このときの光景はいまでもはっきり覚えている。そしておれはその後ずっと、彼女が咲夜姫なのかどうか、なにが原因で憂鬱だったのか、ひょっとして次元の狭間で引き裂かれた二人の境遇が悲しかったのか、ずっと……ずっと考えていた。

 その後の調査で、少女の美しいピンク色の肌は、桜色を示していることがわかった。
 桜色はサクラ――此花咲夜姫命をさしているものと思われる。
 それら咲夜姫の断片的な情報は三十年の歳月をかけて少しずつ蓄積され、ジグソーパズルのようにだんだんと咲夜姫像があらわになっていった。

 ふっ、次元の狭間で引き裂かれた愛……なんとかっこよくて、ロマンチックなんだろう。



    演習のたびに現れる謎の女たち

 おれは何度も何度も富士演習に行ったが、そのたびに何がしかの女たちが現れた。もちろんあちらの世界でのことだ。
 夢とはまったくちがったもうひとつの不思議な世界は、まさしく異次元世界であり、その世界にいるときはまったくの現実の出来事のようだった。

 現実の世界では、昼間は演習やそのための訓練に明け暮れ、汗をかき、おいしいビールを飲むためにわざとのどをカラカラにしておく。だれも訓練のことなど考えていない。夜のこと、飲むことしか考えていない。
 しかし、酒を飲むにはお金がかかる。飲み屋やキャバクラなどにいくのも金がかかるが、一人で飲むのもやはり金がかかる。酒が一番ぜいたくである。隊内でもお金をためる陸曹もいるが、だいたいは酒ばかり飲んでいつも貧乏な人が多かった。



 演習のための訓練がおわり、自らのテントで仲のいい先輩や同期のやつらと散々に飲んだくれて、酔っ払うか、酒がなくなってお開きになるようなパターンだった。
 
 それは夢とも霊体験とも判別できなかった。幽霊は攻撃的なのですぐにわかるが、霊界から来た霊は“ぱっと見”た限りでは人間とかわらないのだ。自分自身も彼らの仲間入りしているので、霊だ、人間だと判別できない。

 なぜか一人の女と性交渉しているときがたびたびあった。それが感触すべてにおいてリアルなので、とても夢とは思えなかった。

 SMの女王様がいて、そのまわりにはサポートする家来なのだろうか、下卑た男たちが5・6人いた。
 女王様といっても中学生くらいだった。しかし、年齢が判然としない。
 顔は十歳前後くらいなのに身体は大人にも負けない発育で妖艶な色香を醸し出していた。
じつはこの少女、咲夜姫とそっ来りなのだ。

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