僕は巫女の三人娘が好きだったのだが、どこからともなく転がり込んできたのが、女子高生の彼女が出来ることとなった。
僕はそのとき巫女の奈津子を好きになりつつあった。それが女子高生――しかも高校一年生の女の子と付き合うことになろうとは。
その少女はあだ名でミカリンと呼ばれていた。当時、そんなドタバタ少女を主人公にした漫画があったと思う。だからたちまちのうちに神社内に噂の種となって広まり、
「よう今枝~~、今日はミカリンとデートかあ?」
「今枝さん、毎日大変ね~~あんな山の中まで送り迎えなんて……」
などと冷やかされた。
しかし、順調にいっていた交際に水を差したのは自分だった。
僕自身も大いに悩んだ。どちらを取るべきか――いやどちらがすきなのか?
しかし、奈津子のほうが年上で落ち着いていたからなのか、ただの相性の問題なのか、最終的に僕は奈津子のほうを取った。どこかしら魅力を感じていたのだろう。
最後にミカリンを見たのは何時のことだったろう。
正月のアルバイトで入ってきて、それから付き合い、バレンタインのチョコをもらい、そして迷いながらもミカリンと付き合った。
ある日の午後、ミカリンはスカートを翻してやってきた。その姿が異様にまぶしくて、まるで映画かテレビドラマを見ているような光景だった。
そして、待ち合わせの喫茶店「智炉瑠」(ちろる)でデートした。これまでほとんど経験のない僕にとっては、まだ羽の生えそろっていない雛鳥のような女子高生は、緊張することもなく気楽だったが、やっぱり奈津子の顔がちらついて本気にはなれなかった。
けっきょく嫌われ台詞を手紙に書いて苦い別れ方をしたのだった。
そういえば奈津子に関しても、僕にとってはいわくつきの女だった。
木曾時代に源義経が平家を滅ぼした因縁を解消するということで、直接御霊より伝達があり一族が遥々壇ノ浦に供養に行ったことがあった。
われわれ木曾氏はたしかに源氏だが、とはいえ厳密に言えばまったく関係がない。
木曾義仲の里は木曾郡藪原村のほうで、じつはまったくといっていいほど関係ないのだ。
だから平家供養というのは、〈木曾の人間なんだからまったく関係ないとはいえない。代わりに謝っておきなさい〉というようなものだ。
関係ないはずなのだが……。しかし、僕にはどうにも引っかかった。
僕は異常なほど源氏への執着があった。
そして彼女は平家の女だった。
伝説によれば、平知盛が富士川で水鳥の一斉に飛び立つ音に驚いて敗走し、源氏の軍勢に敗れたとき、その落ち武者が隠れ住んだとされている。
地理的にこの集落は富士川をずっとさかのぼったところにあるので、なかなか信憑性がある。源氏の軍勢に恐れおののき、逃げおくれて追い討ちにあうよりもかえって富士川を遡り山間を目指したのだろう。いずれにせよ平家となんらかの関係がありそうだった。
奈津子との関係はまた三ヶ月も持たずに終わった。奈津子は「お兄ちゃんのように思える」と言っていたので、そんな関係で済ませたほうが良かったのかもしれない。
けっきょく僕の婚活大作戦はすべて敗北に終わった。
僕は悩んだあげく、どうしても活路を見出せず、此花咲夜姫命に聞いてみることにした。
もちろん、その時でさえ神様が存在するのかわからなかったが、とにかく何かするしかなかった。
例大祭の参篭の夜、拝殿の斜め横から一心にお祈りしていると、すぐさま変化が訪れた。
頭の中に、ギラリと閃光が閃いたのだ。それは鋭く物を切り裂くような、また金属音のようでもあった。
この、鋭い感覚は、断固決行せよと言っているようにも思えた。
このころから咲夜姫は私の命を欲しているように思えた。しかし、僕には勇気がなかった。生への執着が強かったのだろう。
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