2010年4月22日木曜日

警衛――大落雷

警衛とは各中隊で持ち回り駐屯地を警備することだ。年中無休の仕事である。


真夏のこと――中隊は夏季演習で富士演習に行くことになり、おれは駐屯地に残され警衛をすることになった。

夕方、もの凄い雷雨が駐屯地を襲った。
雷鳴が鳴り、集中豪雨にさらされた。
雷もあちこちに落ちたらしい。
すると、突然、轟音とともに雷が落ちた。
すぐ近くの松林に落ちた。
「ど~~ん」一発の雷鳴。爆弾が落ちたようだ。

 ――バキッバキッ――

枝がへし折れる音。警衛舎の横に続く松林の中の一本に落ちたようだ。
すぐ行ってみると、松の木が真ん中から真っ二つに裂けていた。

警衛舎は正門のすぐ横にあるが、そこから外の様子を見ると、市民も大混乱のようで、人々が小走りで走り、車もいきなりの豪雨に運転が困難となっているらしく、のろのろと運転していた。
すると、いきなり信号が消えた。付近一帯も停電になっているようだ。
さあ困った――信号が消えてしまったのだ。大混乱になっているらしい。
――まさか、信号が消えるとは――

信号は一時間もかからずに復旧したが、幸いにして事故は起こらなかったらしい。




深夜、交代で動哨(外柵の周りを歩き回り警戒する)に立ち、おれは暇なので何か考え事をしながら歩いていた。
すると、暗やみより誰か歩いてくるのがわずかにわかった。
当直幹部の巡回だ。
各中隊には当直幹部がいる。駐屯地全体ではかなりの数の隊員が起きていることになる。
おれはすぐに木の陰に隠れ、銃をかまえて目標物の接近を待った。
「誰か――??!!」
「〇〇中隊、〇〇二尉」
「今日の夕飯は何か――?」
「鳥のから揚げとスパゲテイ」 ――正解だ。
「空挺は何の略か?」
「うう…………わからん」

どうやら偽者でもなさそうだし――そろそろ出るとするか。
おれは木陰から飛び出し、控え筒(銃を胸前で斜めに持つ)のまま――
「三中隊動哨、今枝二士、勤務中異常なし!!」

疲れ果てて警衛は終わった。
これが演習の間中行われた。
何しろ、空挺はほぼ演習で出払っている。いわば留守を預かっているのだ。
一日おきに一週間続いた。――疲れるわけだ。

そしておれはあの雷の夜の警衛勤務が優秀ということで、団長賞をもらった。
あの当直幹部が推賞してくれたのだろう。
思うにあの「空挺の略」の件で感心してくれたのかもしれない。

それにしてもあの恐ろしいほどの雷といい、団長賞といい、どうやら咲夜姫がお出ましになったのかなと思った。
半信半疑であったが、起こったことには間違いないし、中隊の好成績といい、咲夜姫のおかげといわざるを得ない。

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