2010年4月22日木曜日

「鱒屋」二人目の女

    「鱒屋」二人目の女

 もうやめるまでに数ヶ月と期日が差し迫ったある日、
「鱒屋に行きなよ。かわいい子が入ったらしいぜ。」と、ふだん仲のいい用務員がいった。
 最初はどうでも良かったのだが、もうあの店で飲めなくなるなと思い、最後のつもりで行ってみることにした。
 のれんを掻き分けて久しぶりに入っていくと、身体は小ぶりだが胸が大きく、光るような魅力を備えていた。なんといっても鋭く、そして妖しく光る大きな目が美しかった。
 相性がいいというのか、感性があうというのか、なにかにつけてげらげら笑った記憶がある。
 素直に国家警察隊に入るということを伝え、「ぜひ会いに来て欲しい、いや会いに来るよ。」と強引に誘った。かなり乗り気だった。
 そして、警察隊にはいってから何度も電話し、何通も手紙を出した。

 一度会いに行ったのだが、芙蓉市までの道のりは長く、ついに門限を気にして何も出来なかった。
 それからしばらくたったある日、いつものごとく手紙が届いた。もう何本にもなっている。しかし、手紙を読んで何かいつもと違う違和感があった。
「あたし、いま急いで書いてます。父が亡くなりました。急に……。私、どうしていいかわかりません。神様でしょう? こんなとき助けてくれないのですか? とにかく急いで返事ください。」
 え、お父さんが亡くなった? そんな馬鹿な……。
 かなり急いでいて慌しいようだった。まだ信じられず、夜、鱒屋に電話してみた。
「本当に急だったらしいよ。引越しもほとんど夜逃げ同然だったって~~」
 店の女将さんも急にいなくなってしまったので困ったような声だ。
まったく突然にいなくなってしまった。
 なんで僕に関わる女性はみな不幸になってしまうのだろう。
 そこでハッと思った。

 ――咲夜姫――まさかほんとうに僕には咲夜姫が関わっているのだろうか?
 
 このあたりから僕は咲夜姫を警戒し始めた。なに者かに見られているような気がしたのだ。

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